――本日営業

『マテリアルゴースト 0』より、「野球部を襲った呪いによる諸問題の解決はさておき、私、真儀瑠紗鳥が、後に下僕となる後輩と如何にして出会ったのかという馴れ初めの、第一話」の続きを勝手に妄想。
文章をパクりながら、適当に。久しぶりに手書きでも書いたのだけれど、アウトプットしにくいし、二度手間だ。


帰宅部を襲った内部告発による諸問題の解決はさておき、私、真儀瑠紗鳥が、後に伴侶となる後輩と如何にして仲を深めたのかという馴れなれの、第二話」


1.
 私には年下の彼がいる。年下……と言うと、なぜこんなにも背徳チックなのだろうか。実際は、単純に、一つ年下の後輩という、ありふれた話なのだけれど。
 年下の彼と私は、それなりに仲が良かった。それなりとしか言いようがない。大事に思ってはいたが、付き合う際、泣きはしなかった。相手を想う心より、照れ臭さが勝るぐらいの……結局、ツンデレではない愛情だ。昨今のライトノベルみたいに、痛々しく「べ、別にあんたのことなんか何とも思ってないんだからね」だのなんだの言えるような性格では、なかった。
 だから、彼と過ごす日々に悲しい気持ちはない。女性との付き合いを許せているとも言い難いけど、それによって嫉妬に走ったりするような単純な感情もまた無かった。
 理解がある人だ……と、周囲は思ったかもしれない。でも、それは少し違う。理解があるんじゃない。相手にしてないだけだった。嫉妬するのも、あたるのも。彼を狙っている女性に対するリアクションは、大別して二つ。
 上から見るか、スルーするか。
 私は、主に前者だった。もう、余裕だった。むしろ勝手に自分たちを下にしていたと言ってもいい。彼女らに彼をとられるなんてことは感じたことがないから。
 元より落ち着いた性格ではあった私だけれど、彼と出逢ってから、感情を表に出すようになった。だって、感情を表に出して得することもあると、知ったから。たまには気ままに過ごすのが、なんだかんだ言って、現在進行で一番得だと理解したから。
 ただ、時折……時折だけど、私も人間だから、少し、寂しくなったりもする。彼がいなくて、一人で朝食を食べている時やら、彼から、「真儀瑠」……「紗鳥」と呼ばれなかった時やら。
 二人の世界は光り輝いて、太陽は必要ない。
 私たちはうまくやっている。のんびりと、やっている。
 それでいい。それで幸せだ。
 そう、思っていた。
 あの、話を聞くまでは。


2.
 放課後になると私はすぐに行動を開始した。HRが終わってすぐに鞄を持ち上げ、教室を去る。ドアから出る際に陽慈が「頼むぞー」と声をあげてきたが、私は関係のないことだったので無視した。
 後輩の教室に向かうのもすっかり慣れてきたその日も、当然のように後輩の教室へと向かう。私は相変わらず注目の的だけれど、以前ほどイライラするようなことはなくなった。後輩の前では私が私らしく振舞えるから。
「失礼します」
 一応、入室の挨拶をする。彼は席に座って、ぼおっ、としている。隣の席のクラスメイトが話しかけているようだが、返事をしていそうにない。私は構わず、後輩の前に立ち、声をかける。
「後輩」
「……あ、先輩。どうしたんですか?」
「どうしたも何もいつものことじゃないか」
「あ、そうですね」
「そうだ」
「はい、じゃあ帰りましょう」
「ああ」
 私と後輩は、何か言いたげな視線を向けるクラスメイトを放置して、教室を出た。


 昇降口に向かって歩きながら、他の生徒に注意しつつ、声をかける。
「なあ、今日、後輩の家に行っていいか?」
「はい? どうしたんです?」
「どうした、とは何だ?」
「いえ、いつも勝手に押しかけてくるじゃないですか。改まってどうしたのかな、と。」
「そうだったか?」
「そうですよ」
「そうか」
「はい」
 そういえばそうだった、と改めるまでもなく、そうだった。覚悟を決めているはずなのに、やはり緊張しているのだろうか。いつもであれば、何の気なしに、後輩の家に入っていたというのに。
 その後、適当に会話を交わしながら、私たちは後輩の家へ向かった。


3.
「後輩……」
「何ですか?」
「今日は……妹はいるのか?」
 私は、後輩の家の前で、少々躊躇してしまっていた。……感情を静める。狼狽するとまでは言わないが、それでも、平静とは一線を画している。
 後輩が、分かっているのかいないのか、答える。
「サンですか……うーん、まだ帰ってきていないのであれば、いないでしょうし、帰ってきていればいるでしょうし。今日は帰ってこない、というのを聞いていないことは確かです」
「そうか」
「はい」
 後輩は、どうしてそんなことを訊くのか、と少し困惑した顔をしたが、すぐに自分の家に向き直り、玄関の扉を開けた。
 妹がいても、やってやれないことはない、いやむしろ……そんなことを考えながら玄関に上がった。


「お帰りー、兄さーん」
 と、小走りにやってくる少女はおらず、どうやら今日はまだ帰ってきていないようだ。私は、ほっ、としたことを実感しながら、後輩の後に続き、後輩が自分の部屋のドアを開け、私たちは部屋に入った。
「どうぞ、テキトーに座って下さい」
 と、言われるまでもなく、私は適当に座る。適当に、といってももうお決まりだった。馴染みのクッションに手を伸ばしていると、後輩は部屋のドアを閉めた。
 私は、表情に出さないようにしながら声をかける。
「妹はいないみたいだな」
「そうですね、まだ帰ってきていないみたいです」
 少なくとも事をしでかす上では好都合であることは確かなのだが、その事をしでかすことができるのかは分からない。だが、私は覚悟を決めてやってきたはずだ。やってやれないことはない。そうだ。何なら無理やりにでも……そんなことを考えている内に、後輩はパソコンを起動し、とあるサイトを画面に表示させていた。
「何を見ているんだ?」
「友人から紹介された相談サイトです」
「相談サイト?」
「はい。一部のマニアには有名らしくて、本当に困っている場合、そこの掲示板やメールで質問を仰ぐと、凄く頼りになる回答が得られるらしいです。それこそ、テレビに出ているインチキ占い師よりよっぽど的確なアドバイスをくれるとか」
「ほぉ……。いったい誰がそんなサイトを? 高名な心理学者なのか?」
「さあ? よく分からないらしいですよ。ハンドルネームは 《パッション》 っていう人らしいですけど」
「パッション? 変な名前だな。……パッション屋良の、パッションか?」
「さあ……」
 後輩はそう言って体を横に動かし、私に画面がよく見えるようにしてくれた。HPの名前は……。
「答えて★パッション? パッションはともかく、相談サイトにふさわしいタイトルではあるな」
「そうですね」
「案外、本人がやったりしていてな。ははは」
「まさか。そんなことありませんよ」
 私と後輩はしばし笑い合う。確かに、その発想は安直すぎるな。もし本当に本人だったとしたら、あれほど忙しい仕事の合間にやっていることになる。そんなことは無理だろう。
 後輩は掲示板に書き込もうとしていたが、<チャット> という項目があることに気がついた。
「実際にリアルタイムで相談できる……ってことでしょうか?」
 後輩の疑問に、私は少し考えてから言葉を返す。
「でも、それだけ有名なサイトなら、チャットで相談したい人なんてごまんといるだろ。ごちゃついているんじゃないか?」
「まあ……とりあえず、入ってみますか」
 後輩はそう言って、<チャット> をクリックする。すると、意外なことに、参加者はこちら以外に一名。例の、パッションとやらいう人間だけだった。不思議に思っていると、パッションとやらからメッセージが入る。
<ようこそ。『真に悩める人』>
「? どういうことでしょう?」
「さあ……とりあえず、いい機会だし、話してみたらどうだ?」
 私に促されて、後輩はキーボードを操作した。ハンドルネームを入力しようとすると、画面に文章が表示された。パッションとやらが入力したのだろう。
<あなたの名前は何ですか?>
 後輩は、ハンドルネームを入力し、続けて質問に答えると、パッションとやらの返答が続いた。
<そうだね、プロテインだね>


 後輩は、サイトを閉じた。



とりあえず、ここまで。まだ続きます。続きはもっとオリジナルに。