――本日営業

こちらの続き。明日にしようかな、と思ったけれど、支部長の意見もあり、方向性をはやめに明らかにしとこう、ということで。続くかどうかは知らね。あーッ! すみません、支部長、メガネ忘れてたので、次回には。ということで、もう一話は続く。


 第二話 「MO散りゆく」


 1

 そんな恥ずかしい思いをしながら、今日も街を歩く。
 笑って済まされるような好意的な変態のカテゴリにいるのか、この上なく目立ちどこの誰かが分かっているからなのか、小さい子が寄ってきても、心配ではあるけれど、手がかからなくなるのはよしとされるのか、俺はどうやら小さい子のお守り役をいつのまにか任され、「ガチャガチャきゅ〜と・ふぃぎゅ@メイト」などを歌いながら、被ったフィギュアを並べたような行列になるのが通例となっていた。
 そんな中、やはり個性というものも感じられるわけで、多少、積極的な関わりを持たざるを得ないことがそれなりにあって、俺はそんな気があったのかは定かではないが、いくつかの事件、というものに遭遇することになった。


 2

 ある日、ちる、という子が泣きながら俺にこう言った。
「も、もう、うぅ、ひ、いっ、ひぐっ、しょ、しょ、に、いられなぃ……」
 理由を尋ねると、こう答えた。
「ひ、ひぅ、ひっ、ひっこす、ん、ぐ、だってぇ……」
 両親の転勤ということで子供を置いていくわけにも行かず、まだ小さいこともあり、手がかかるだろうからと親戚に預けるようなことはないらしい。
「ん、んぐ、いっ、ひっ、ぐっ……」
 くすくす笑う子供たちを尻目に、俺は多少、事前の途方に暮れた。


 3

「ただいまぁー」
 明るい声の彼女の後に続いて、お邪魔しますと、家に上がる。
「おかえりぃー」
 とこれまた明るい声に迎えられ、部屋に入る。
「あら、いらっしゃい」
 初対面ではないものの、やはり恥ずかしいので、でこを手で覆いながら相対する。
「もう、ほんと恥ずかしがり屋さんなんだから。ふふっ」
 そう笑って、全身タイツという格好に特に触れることもなく、座るようにすすめられる。


 4

「あの子から話を聞いたのね?」
「はい、詳しいことは知りませんが」
「それで、私に訊きに来たと」
「はい」
「ふーん」
「…………」
「ねぇ」
「はい?」
「それだけ?」
「えっ、それだけですよ」
「本当に?」
「ほ、ほんように、って」
「あら、他にも目的があるようね」
「っ……」

「一つ、おもしろい話をしましょうか」


 ――――――――――――――――――


 こうやってかどこからか親子関係の情報を集めて、世間に紛れる変態がいる。彼もしくは彼女が何故、変態と呼ばれるかは定かではないが、その行動ゆえ、というのが多くの見解である。
 知らず知らずのうちに、介入され、子供を連れて行く、俗にいう、誘拐、というやつだ。その後、慰み物になるのか、などは誰も知らない。一般的な範疇から逸脱したその行動は、変態、と称されるに相応しい。
 例に漏れず、変態というカテゴリに属する人物には、世間の注目が集まり、テレビ局の取材も活発に行われた。その過程で、不明なことが不明なことだけでなく、明らかになってきたことがあり、ますます、熱は上がった。
 時間の経過とともに、巻き込まれた子供の数、発生地域は増加し、時間帯は絞られ、行動の傾向は掴まれていった。
 多くの情報が寄せられ、真偽問わず、貢献したことは言うまでもない。


 そして、遂に、件の変態に対して、インタビューが行われ、どうして子供を誘拐したのか、誘拐後どうなったかを誰も知らないのか、全てが白日の下に晒された。
 再婚だろうが養子だろうが子供に罪はなく、親子関係に軋轢が生じている家庭に介入し、子供との絆を深めてもらうために行ったこと、わざわざ家庭の問題を外に発信することもないこと。


 最後に、その変態はこう言って自分の経営する孤児院に帰って行った。
「親が子を殺しても罪、子が親を殺しても罪、兄が妹を、弟が姉を殺しても罪。所詮、血の繋がりなんて、そんなものでしかありません」


 5

「了解。お疲れ様」
「うん、お疲れ様」
「変態は、よしとして、お前の方は解決したのか?」
「うーん、まあ」
「曖昧だな」
「自分の問題じゃないしね」
「それは、いくら何でも冷たいんじゃないか?」
「そう?」
「ああ」
「だって、ちるちゃんの友達のことで、会ったこともないから」
「あ、そう……」
「じゃあ、さよなら」
「…………」
「さよなら」
「なぁ……」
「さよなら」
「はぁ……」
「さよなら」
「分かったよ」
「さよなら」
「じゃあな」
「さよなら」
「…………」
「またね」
「ああ、またな」


 6

 ということで、世界観/価値観が伝わったでしょうか。そう、この世界では、変態とは愛されるべき存在なのです。
 今後も多くの変態が存在をまとめられていくことでしょう。