――本日営業

  • 「移動する都市という可能性_その1」

 これが、釣りタイトルというやつだな。以下、用語等の説明は略。
 学祭のポスター発表、適当に何でも良い、というのもあるようなので、時を同じくして発行され、それぞれ、星雲賞ライトノベルアワード学園部門賞を受賞した、創元SF文庫の『移動都市』、富士見ファンタジア文庫の「鋼殻のレギオス」シリーズ(前者も全4作のシリーズで、続刊が12月、後者も過去篇続刊が12月に発売予定)を題材として、セルオートマトンなんかでシミュレーションでもして、発表して気付く人がいるかな、と時間があればやりたかったな、と夢物語。


 さて、先日、創元推理文庫から『理由あって冬に出る』という本が出版され、、表紙がtoi8さんのイラスト、購買/読者層の異なる版元で、創元側が、ライトノベルを意識したつくりをしている、ということで、以下のように、それぞれ、紹介されております(他にもあるかもしれません)。

 平和の温故知新@はてなさんでも挙げられていますが、ハヤカワ文庫SFでも、表紙がエナミカツミさんのイラストの作品――『ティンカー』(タイトルからは『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を思い出しました)、『ようこそ女たちの王国へ』――があります。
 自分は、全くイラストに抵抗がないので、気にしませんし、個人的にもエナミさんのイラスト(特に軍服)は好きなので、より手にとって読む気になりました。前者よりも後者の方が、読前読後とも、イラストの効果は大きく、個人的に後者の設定の方が好みでもあり、価値観も顕著で、主人公周りの登場人物も豊富(主人公の姉妹、弟だけでも30人以上)、イケメンやら不細工やら外見を重視しているので、イラストがあった方がより、イメージできて、楽しめる、と思います。
 合わない人は、女性と男性の差にではなく、特に、価値観、顔、見た目という評価に、合わないかもしれません。ストーリィ上仕方ないことかもしれませんが、欠点とも、な、どんだけ美人でどんだけ不細工なんだよやら浮浪者が使い捨てられることやら。逆に、見た目やら内容紹介に騙されたい人は、良いかもしれません。主人公に関してはご都合主義が目立ちますが(傍から、まあ一読者からすると羨ましい限りなので)、ところどころ死やら死に体やらハードです。でも、それらも引きずっているようでありながら、淡白な感じで進んでいくので、あえて触れられていないのか、そこまで重く、あまり深く考え過ぎないように配慮なされているのか、解説にあるような、男が極端に少ない原因が描かれていない、というようなことはどうでもよくなり(自分は元からどうでも良いですが)、その世界を楽しめると思います。
 となると、やはりキャラクタの魅力にかかってくるわけで、ギャップは味わえますが、登場人物が多いためか、あまりそれぞれが描かれておらず、短いからこその破壊力、というのもイマイチだったと思います。あることにはあるのですが、描写、流れがイマイチでした(ツンからデレへのきっかけが薄く、そこ――男嫌い、男性不信な問題の解決――は大事なとこじゃないのか、と思うのですが)。このあたりは、虚焦点気質の日本の作家の方だとうまく描けるのでしょうか、物足りない、もったいなく思いました。


 三軒茶屋 別館さん、雲上四季さんでは、言葉を拝借して、若い人・ライトノベルを好んで読んでいる読者層にも喜ばれる(んじゃないかなぁ)作品、ライトノベル調のイラストが表紙を飾っている作品を挙げられています。主視点が大学生、高校生だとジャンル問わずな(キャラクタが際立っていれば、そう捉えてしまうので)、自分のライトノベル感覚でいくと、他には、『繭の夏』(お姉ちゃんッ!)、『百万の手』(人物イラスト有り)、『林檎の木の道』(女教師)でしょうか。どれも、やはり、知らなければ良かった的な、苦さ、が良いですね。前二つは、取り上げられている事件は一応解決していますが、半端やらもっと読みたいな、と。『百万の手』の方は、そろそろなのかな。


 以前から、『移動都市』と「鋼殻のレギオスシリーズ」の両者を同時に取り上げて紹介している方もいると思います。自分も取り上げようと思っていましたが、その内、その内、と流れて、上記のこともあり、この機会に、と思ったのですが、まだ先になりそうです。


 最後に、『移動都市』に関して。表紙が壁画調のイラストなので、新装版もありじゃないかな、と。
 解説に、海外で児童書に与えられる賞を受賞、とあるのですが、星雲賞を受賞したことも含めて、確かにおもしろいとは思うのですが、首を傾げずにはいられません。主人公がぽんぽんと騙されることから疑心暗鬼になりそうだし、肝心の成長する過程、特に内面があまり描かれていないように感じ、展開は現在放映中の機動戦士ガンダム00の第5話における、刹那側と沙慈とルイス側のような感じで、勢力またそれを追うものの対比が浮いているようにも感じますし、何より、登場人物が死ぬのが残念でならなかった。それも西尾維新さん的に。魅力的な人物だけでなく、ほぼ全滅
 これらのことから、このようなスタイルなのか含めて、2年後となる次回作以降の方がもっとおもしろそうだと思っていたので(1年以上経っての発売)、星雲賞を受賞、ということには驚きました。


 ということで、その1、終わり。